ベトナムといえばバイク——このイメージを持つ人は多くないでしょう。しかし、街中を埋め尽くすバイクの群れ、そして道路を縦横無尽に駆け巡るその姿は、訪れた人々に強烈な印象を残します。
ベトナムが「バイク大国」と呼ばれる理由
ベトナムでは、バイクの保有台数が実に約7,500万台（2024年時点）に達しています。人口約9,700万人に対してこの台数は驚異的で、人口1,000人あたりの保有台数は約74台。これにより、世界で最も高いバイク保有率を誇る国の一つとなっています。
この背景には、ベトナム特有の地理的条件や経済状況が関係しています。公共交通機関が十分に発展していないため、多くの人々が手軽に利用できるバイクを選ぶのです。また、バイクの購入価格が安価であることも、普及を後押しする大きな要因となっています。
ベトナムの街中で見られるバイク文化
ベトナムの街に一歩足を踏み入れると、そこには独特なバイク文化が広がっています。ホーチミン市やハノイといった大都市では、バイクが主要な交通手段であり、その数は他国の大都市と比べても圧倒的です。道路はバイクで溢れ返り、信号待ちの間には列を成すその光景はまるで”バイクの滝”と称されるほど。
なぜベトナムでここまでバイクが普及したのか？
経済的な要因
ベトナムでのバイク普及を語る上で、経済的な理由は欠かせません。バイクは自動車に比べてはるかに購入価格が低く、維持費も安いため、所得水準がまだ高くない地域でも手に入りやすいのです。例えば、ホンダのような現地生産が行われているメーカーのバイクは、数万円から購入可能なモデルもあります。
さらに、都市部では渋滞が激しいため、小回りが利くバイクは便利です。これが、通勤や通学、さらには商業利用まで幅広く使われる理由の一つです。
地理的な条件
ベトナムは温暖な気候が特徴で、一年を通して屋外での移動が快適です。また、道路幅が狭いエリアが多いことも、バイクが主流となった一因です。農村部では、山道や未舗装路といった場所でもスムーズに移動できるため、バイクが必要不可欠な存在となっています。
バイクがもたらすベトナム社会への影響
ベトナムでのバイクの存在感は、社会的・経済的にも大きな影響を与えています。
経済の活性化
バイクの普及は、多くの関連産業を生み出しています。販売や修理、部品製造、さらには燃料供給まで、多岐にわたる分野で雇用が生まれてました。
観光客向けのレンタルバイクやバイクタクシーのサービスも盛んで、これが地域経済を支える要因となっています。
課題も残る
しかし、課題も存在します。交通事故の発生率が高いことや、大気汚染の原因となる排気ガスの問題が深刻です。このため、近年では電動バイクの普及が進められています。ベトナム政府も補助金制度を導入し、環境に優しい交通手段への移行を促進しています。